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世界はフラットにもの悲しくて

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世界はフラットにもの悲しくて
― 特派員ノート1992-2014

藤原章生 著
定価:本体2,500円+税
判型:四六
頁数:336頁(カラー)
ISBN 978-4-88696-032-0


2011年3月10日、
内戦中のリビアに密入国した
翌朝、東京から届いたメールの件名は「地震」――


開高健ノンフィクション賞作家の毎日新聞記者が見た世界。

‐エルサルバドル、20代のひとときをともに過ごした女性ゲリラを19年後に訪ねて
‐イラク、サダム・フセインに仕え、その死を預言した男との不思議な対話
‐リビア、カダフィと闘う男たちと砂漠で歌った「ささのはさらさら」、等

アフリカ、ラテンアメリカでの体験を中心に、46篇。


砂粒のようにもの悲しい、小さな生を、その人の国籍や地位、所属、経歴にとらわれず私は見たい。

2011年3月11日、世界中のメディアに先駆けて密入国したリビアで、私は震災を知る。こんな砂漠の中で、自分に何ができるだろう。とにかく目の前の仕事をしようと、町を歩き、前線の状況を聞いて回る。町にあったのは恐怖、そして諦観だ。一行も記事にならない原稿を東京に送り続けながら自問した。「俺はここで何を見たいのか、何を聞きたいのか」。2年半後、赴任していた福島県の郡山駅前で一片の言葉が浮かんだ。「世界はフラットにもの悲しくて」。何かをとらえるとき、アフリカ、中南米、福島といった大きな枠でとらえると間違いを犯す。枠の中には、幾多の個人がひしめいているからだ。


アマゾンアフリカ、ラテンアメリカ、東京、福島。「世界」という枠が消えるとき。

私が見たのは、少年兵の訓練。つまり事実上の少年殺しだった。電話も何も通じないこの町から日本に、いや世界に向け、「ルワンダ政府が子どもを殺している」と叫んだところで、どうなるというのか。それでも目いっぱい書こうとした。ときに直球で、ときに斜に構えて。でも書き切ることはなかった。
――Scene43「戦争は伝えられるか」より

五十カ国もの国々、幾百、幾千の言語、民族という豊穣さを抱きながら、アフリカという地が、他の大陸の人々にとってさほど重要ではないからだ。だから、「アフリカを……」という言い方には、注意した方がいい。そこには無知と思い込みがある。
――Scene37「黙るしかないスローガン」より

それを原稿にするとか、記憶にとどめることなどは考えず、ただ日々、目の前で起きることを眺めていた。貧しさや、暮らしといったことも考えなかった。そこから何かをつかみ取ろうという欲など何一つなかった。だから、記憶はあれほど輝いていたのかもしれない。取材者が何かを得る分、何かを失うとすれば、きっとそういうことなのだ。
――Scene23「女性ゲリラとの出会い」より

「私たちには家具も何もない。だから逃げるとき、みんな一番いい服に着替え、一番いい靴をはいて、リュックサックに自分の物を詰めて、家を出たんです。そして走ったんです(略)」なぜ米軍は子どもの上に焼夷弾をばら撒いたのか。なぜ、田舎に暮らすごく普通の家族の、しかも子どもたちだけを虫けらのように殺したのか。
――Scene41「楽園のピクニック」より


著者プロフィール

藤原章生(ふじわら あきお)

ジャーナリスト、毎日新聞編集委員

1961年、福島県常磐市(現いわき市)生まれ、東京育ち。北海道大学工学部資源開発工学科卒業後、住友金属鉱山に入社。1989年、毎日新聞社記者に転じる。長野支局を経て、1992年より外信部。ヨハネスブルク特派員(1995~2001年)、メキシコ市支局長(2002~2006年)、ローマ支局長(2008~2012年)。帰国後、夕刊編集部を経て、2013年4月より編集委員兼郡山支局長、2014年4月より編集委員(地方部兼デジタル報道センター)。

2005年、アフリカを舞台にした短編集『絵はがきにされた少年』(集英社)で第3回開高健ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社、2007年)、『翻弄者』(集英社、2009年)、『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』(毎日新聞社、2010年)、『資本主義の「終わりのはじまり」』(新潮選書、2012年)。毎日新聞社ウエブサイトで、紙面掲載記事と「大衆作家・ガルシア=マルケス」等、オリジナル・コンテンツのアーカイブ『藤原章生の“引き出し"』を更新中。


目次

はじめに
PROLOGUE 言葉はどこまでもロマンチック
CHAPTER 1 路上の生
CHAPTER 2 果ての情景
CHAPTER 3 男
CHAPTER 4 女
CHAPTER 5 ラテンアメリカ文学の舞台
CHAPTER 6 死
CHAPTER 7 神
CHAPTER 8 国家、アイデンティティー
CHAPTER 9 戦場にて