『すぐに役立つモンゴル語会話』番外編
モンゴル草原の国だより Vol.15
モンゴルの子どもの本 ~2~ 文:津田紀子
テンブックス刊行の「すぐに役立つモンゴル語会話」の編集をしてくれた 津田さんに、モンゴルの文化や生活、気になるトピックスを紹介してもらう コーナーです。 みなさまからのご質問もお待ちしています。 >>mongol@ten-books.jp

■ 子ども図書館

子どもと本を結ぶ大切な役割を果たす図書館。モンゴルでは、2003年にウランバートル中心部の文化中央会館内に、児童書専門の子ども図書館(CHILDREN'SBOOK PALACE)がオープンしました。

じつは、社会主義時代にも、ウランバートルの中心地に児童書を専門とする子ども図書館がありました。そこへは毎日たくさんの子どもが訪れて、本を読んだり児童文学作家と交流したりしていたそうです。ところが、90年以降、子どもの教育や文化に目を向ける余裕がなくなってしまった中で、子ども図書館の建物は銀行となり、子ども図書館は姿を消してしまいました。その子ども図書館がふたたびモンゴルに戻って来たのです。

以前は国立図書館の管轄下にあったが、2005年5月に国立図書館の管轄を離れて独立した。

この子ども図書館の蔵書数は11万冊(外国語の本を含む)で、29人のスタッフが働いています。就学前・10歳の読書室、11・15歳の読書室、16歳以上の読書室と年齢別の部屋割りがされており、それぞれの読書室に司書が配置されて、本を選ぶ子どもたちの相談相手になっています。また、モンゴルではめずらしく開架式が主体です。就学前・10歳の読書室では2000冊あまりの本が読書室内の書架におさめられ、子どもたちは書棚から好きな本を手に取って、自由に選んでいました。平日には300・350人の子どもたちが訪れて、読書を楽しんでいます。

さらに「アンデルセン生誕200年記念祭(2005.4開催)」「チェコの絵本イラスト展(2005.5開催)」などのイベントや展示会も行っており、子どもの読書にかかわる活動にも力を入れています。

■ 終わりに

このように児童書と読書環境に明るい兆しが見られるようになってきた中、児童文学作家たちも、徐々にその活動の幅を広げています。たとえば、親向けの講演会。「子どもたちにどんな本を読ませたらよいか」といった内容の親向けの講演は、以前はほとんど関心が払われなかったそうですが、最近は熱心に耳を傾けてくれる親がぐんと増えたそうです。また、モンゴル児童文学に関するホームページを立ち上げて情報発信をはじめた作家もいます。これも思った以上のアクセスがあり、なかなかの手応えを感じるとか。さらに今年はIBBY(国際児童図書評議会)にも加盟したので、今後は世界各国との交流もより活発になりそうです。

とはいえ、問題はまだまだたくさんあります。地方に暮らす子どもたちの読書環境は依然厳しいまま、作家たちは、作家の仕事だけでは生活に足る収入を得ることはできません。本屋に並んでいる児童書の数も、100万人あまりの子どもたち(モンゴルは全人口250万人のうち19歳以下が123万人を占める)の需要に応えるにはあまりに少なすぎます。

しかし、児童書に関わっている人々の熱意と努力によって、徐々に状況が好転して来た今、残された問題もよい方向に変わって行くことは大いに期待できます。今後、この流れが一層大きく太くなって、ユニークで素晴らしい作品がたくさん生み出されていくことを願っています。

■ 本屋の書棚から

モンゴルの本屋で見つけた児童書の中からいくつか面白い本をご紹介します。モンゴルには「スーホの白い馬」以外にもユニークなお話がいろいろあるんですよ。

・わたしの家 (B.ボロルマ作・絵)/原題"Minii ger"

作者のボロルマーは、国内外の絵画コンクールで数々の受賞歴を持つ、今、もっとも注目の絵本作家。この作品では、モンゴルの草原の一年と伝統的な遊牧の暮らしが、遊牧民一家に生まれた赤ちゃん「ジルー」を通じて語られています。2004年度野間国際絵本原画コンクールグランプリ受賞作品。2005年。

 

 

・賢いタルバガン(J.ダシドンドグ作)/原題"Suiheetei hotil"

モンゴルの草原には、タルバガン(モンゴルマーモット)という動物がいます。体長は50-60センチ、丸いお尻を左右に振りながら草原を走る姿がかわいらしい動物です。 

このお話の主人公は、鷲に襲われ今にも食べられようとしているタルバガンです。力では鷲にかなわないタルバガンは、知恵を使ってこの状況を打破しようとしますが、タルバガンの運命は?さらに、この作品では、タルバガンと鷲が戦ったり話をしたりしているようなめずらしい写真とともにストーリーが展開、さながら現実におきた出来事を見ているようで楽しめます。児童文学作品コンクール「新世界」最優秀賞受賞作品。2003年。

・詩の書き方 (D.バトジャルガル作)/原題"Shuleg yaj bichih ve"

題名は「詩の書き方」ですが、いわゆるハウツー本ではありません。この本の前半では、児童文学作家である作者が学校を訪れて、子どもたちに詩や文学について話をするなかで受けた質問(「詩ってなに?」「どうして作家になったの?」等)に、わかりやすく答えています。また後半では、作者自身がモンゴルで活躍する著名な作家たちにインタビューして、詩とは、文学とは何かを問うていきます。大学の数学科を出ていながら、児童文学作家になるという夢を追い続けて作家になったという作者。詩や文学を愛する気持ちが強く伝わって来る作品です。2005年。

●モンゴル児童文学の情報を知るなら…

モンゴル児童文学サイト「テムジン(チンギスハーンの幼名)」は、モンゴルの児童文学作家の作品や略歴、モンゴル児童文学の最新情報を読むことができる充実したサイトです。ただしモンゴル語で、2005年9月から有料(4ヶ月3ドル、半年5ドル、1年9ドル)。アドレスはhttp://www.temujin.url.mn/