『すぐに役立つモンゴル語会話』番外編
モンゴル草原の国だより Vol.14
モンゴルの子どもの本 ~1~ 文:津田紀子
テンブックス刊行の「すぐに役立つモンゴル語会話」の編集をしてくれた 津田さんに、モンゴルの文化や生活、気になるトピックスを紹介してもらう コーナーです。 みなさまからのご質問もお待ちしています。 >>mongol@ten-books.jp

モンゴルでは、社会主義時代には、かなりの数の児童書が出版されていたのですが、1990年からはじまる市場経済化・民主化への移行の過程で、子どもの本がほとんど出版されなくなってしまいました。以来、作家は自己資金もしくは自分でスポンサーを見つけて出版するしかなくなり、本屋の児童書コーナーは閑散としている…そんな状況が続いて来たわけですが、近年、少し明るい兆しが見えてきています。というわけで、今回はモンゴルの子どもの本の今を報告したいと思います。

■ 増えて来た児童書

90年代の本屋の児童書コーナーといえば、外国語学習本か、ロシアからの輸入本、またはモンゴルの民話くらいしか見当たらなかったのですが、最近、モンゴルの児童文学作家による児童文学や絵本が増えてきています。大きな本屋に行けば、だいたい15-20冊程度は置かれているでしょうか。ここ5、6年の間に印刷技術が格段に向上したため、どの本も美しいカラーの絵や写真が入っていますし、内容もファンタジーや幼年向きの絵本など、今までになかった作品が登場。価格はだいたい1500・3500トゥグルグ(約150・350円)で、刷り部数は1冊につき1000部が平均です。

これらの中でもとくに注目したいのが、2000年頃から作品を発表し始めた新人の作家たちの作品です。新人作家には、2004年の野間国際絵本原画コンクール(ユネスコアジア文化センター主催)でグランプリを受賞したB.ボロルマをはじめ、G.エンフアムガラン、N.マンダルらがおり、とりわけボロルマは絵本作家として国内で高い評価を得ています。

モンゴル国内で出版されている児童書の数は、まだまだ本当に少ないですが、このような新しい作家たちの意欲作が書棚に並んでいるのを見ると、モンゴルの児童文学がだんだん活気づいてきていることを感じます。

■ 出版社による出版へ

90年代の出版というと、作家が自らの資金で(もしくは自力でスポンサーを見つけて)行うことがほとんどだったのですが、近年、出版社が児童文学やイラストのコンテストを開催して、その中から優秀な作品を選んで出版することも行われるようになりました。モンゴルで児童書に力を入れている出版社には、<ムンフニー ウセグ><アドモン><オンゴット ヘブレル>といった会社があり、2003年には、<アドモン>が中心となって児童書原画コンクールを、<ムンフニーウセグ>が児童文学作品コンクール「新世界」を開催して、それぞれ上位に入賞した作品を出版しましたし、現在は、<オンゴット ヘブレル>が全100冊の児童書シリーズを刊行する予定で、原画を募集しています。

こうしたコンテストには、すでに児童文学作家や画家として著名な人から学生まで多くの人が参加し、彼らにとっての大きな励みになっています。90年以降、全国的に大ヒットするような児童書は出ていないのですけれど、よりよい児童書をつくるために多くの人が動き出しはじめた今、そんな本が生まれる日も遠くないような気がしています。

(次号につづく)