『すぐに役立つモンゴル語会話』番外編
モンゴル草原の国だより Vol.8
モンゴルのお正月の迎え方 文:津田紀子
テン・ブックス刊行の「すぐに役立つモンゴル語会話」を編集してくれた 津田さんが、ご一家そろってウランバートルで生活されることになりました。 そこで、モンゴルのいろんなトピックをおたよりで紹介してもらうことにしました。 ご質問もお待ちしています。 >>mongol@ten-books.jp

サインバイノー!

伝統的に旧暦でお正月を祝うモンゴルでは、今年(2005年)は2月9日がお正月でした。

今回は、モンゴルの食生活についてご紹介したいと思います。

お正月は、モンゴル語で「ツァガーンサル(白い月)」といいます。古くより大切な行事として祝われてきたのですが、社会主義時代には、民族的なものが否定されたことから、都市部の人々の間では、ほとんどお祝いされなくなったそうです。

しかし、民主化以降、多くの伝統が復活する中で再び祝われるようになり、今では、夏のナーダム祭り(弓射、相撲、競馬の技を競うスポーツの祭典)と並んで、モンゴルの大切な行事となっています。

ツァガーンサルが近づくと、街も人もお正月を迎える準備でそわそわしてきます。

家中の大掃除をしたり、来客用のお土産を用意したりといろんな準備があるのですが、その中でもっとも大変なのがお正月用のお祝い料理作りです。

モンゴルのお祝い料理は、羊肉と小麦粉、乳をおもな食材とし、オーツ、ボーズ、ヘビンボーブといった料理をつくります。

種類が少ないと思われるかもしれませんが、年始挨拶に訪れるお客さんが一軒で100人を超えることもめずらしくないモンゴルでは、作る量が半端ではありません。

ボーズ(蒸し餃子)にいたっては、一家庭で1,000~2,000個も作らなくてはならず、お正月前に家族総出で必死に作り、外の物置やベランダなどで冷凍保存しておきます。

それから、干しチーズなどの乳製品、ウオッカや馬乳酒、乳を蒸留させてつくった蒸留酒などのお酒を準備して、当日に備えます。

■ ヘビンボーブ ■ オーツ
ヘビンボーブ オーツ
小麦粉にバター、砂糖、塩、水を混ぜて型抜きし、油であげたもの。これを段々に重ねて角砂糖や乳製品を置いて盛りつけます。 羊の尾のついた胴体部分を丸茹でにしたもの。遊牧民宅では自宅で茹でることがほとんどですが、ウランバートルのアパートに暮らす人々は、たいてい店で購入します。大きさによって値段は異なり、40,000~80,000トゥグルグ(日本円で4,000~8,000円)くらい。


ヘビンボーブ■ ヘビンボーブ
ミンチにした肉を、小麦粉をこねて薄くのばした皮でつつんで蒸した餃子。(写真手前)

さて、元旦の朝には、今年一年の災いを追い払い、幸運が呼び込む儀式のようなものを行います。これは、自分の家から一定の方角に向かって歩いて戻って来るというものです。歩く方向は生まれ年によって決められているので、人によってちがうそうです。

それが終わると、晴れ着に着替え、親や親戚、知人宅へと年始回りがはじまります。正月の挨拶にはしきたりがあります。ハタグ(尊敬や幸福の意をあらわす青い布)を手に持ち、年下の者が年上の者の両腕を下から支えるように持って、「よい新年をお迎えでいらっしゃいますか」と言いながら、お互いに頬を近づけます(写真)。それから嗅ぎタバコを交換しあいます。

席に着くと乳茶が出され、最近の近況を尋ね合ったりしながら、テーブルに並ぶ料理をいただきます。ボーズは、お客さんが来てから蒸しますので、湯気のたったアツアツが出てきます。それから主人の乾杯の音頭にあわせて、ウオッカで乾杯を繰り返します。帰る頃には、お腹がぱんぱん、足元ふらふらなんてことも。また、帰り際には、お土産まで配られます。

こうして年始の挨拶が一通り終わるわけですが、これで終了ではありません。一軒終わると次の家へ行き、同じように挨拶→嗅ぎタバコ→乳茶→ボーズ→乾杯が繰り返され、終わるとまた次の家へと挨拶回りが続くのです。ですから、ツァガーンサルが終わる頃にはぐったり…という人も。

でも、そうはいっても、ツァガーンサルは家族や親戚が集まり、伝統的なしきたりと料理で一年の幸せを願う大切な日。遠くに暮らす子どもや孫が帰ってきたり、晴れ着を着せてもらった子どもたちがはしゃいでいたりと、喜びに溢れています。モンゴルの春も、もうそこまできています。

それでは、また。バヤルタイ。