『すぐに役立つモンゴル語会話』番外編
モンゴル草原の国だより Vol.3
遊牧民の冬じたく 文:津田紀子
テン・ブックス刊行の「すぐに役立つモンゴル語会話」を編集してくれた 津田さんが、ご一家そろってウランバートルで生活されることになりました。 そこで、モンゴルのいろんなトピックをおたよりで紹介してもらうことにしました。 ご質問もお待ちしています。 >>mongol@ten-books.jp

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9月になり、草原で夏休みを過ごした人々が戻って来て、ウランバートルは、ふたたび賑やかになりました。陽に焼けた顔で「草原に行って若返って来た」 とか「疲れがとれた」などと話しているのを聞くと、日本人の温泉のように、モンゴルの都市に暮らす人々にとって草原とは身体と心を休め、疲れを癒す場所なのだなあと感じます。

いっぽう、草原で暮らす遊牧民にとっては、草原は日常生活の舞台。家畜の出産を迎える春、搾乳と乳製品づくりに励む夏、家畜を太らせて冬の支度をする秋、寒さや飢えから家畜を守る冬と、一年を通じて家畜と深くかかわって暮らしています。そこで、今回は、夏の終わりから秋にかけて(8月から10月)の遊牧民の生活をご紹介したいと思います。

■ 遊牧民の秋のくらし

冬を間近に控えたこの時期は、気候が安定したよい季節ですが、遊牧民にとっては一年でもっとも忙しいシーズンです。この時期の大事な仕事は、まず家畜をしっかりと太らせること。身体にたっぷりと脂肪をつけ体力をつけることで、ときにはマイナス40度にもなる厳寒の冬を耐え抜けるようにするのです。そのため、8月頃からよい草場から草場へと移動をして、家畜にたくさんの牧草を食べさせます。短い期間で別の草場へと移動する生活となるため、男性が家族と離れてテント生活をしながら移動することもあります。

また搾乳と乳製品作りも大切な仕事です。

これらは女性の仕事で、乳がたくさんとれる夏は、馬は2時間おき、牛も一日に2回は搾乳しなければならないので、家畜の頭数が多ければ多いほど大変です。この搾乳した乳を利用して、ヨーグルト、チーズ、馬乳酒などさまざまな乳製品を手作りしますが、8月以降は、搾乳量の少ない冬~春のために、長期間保存できる乾燥チーズなどの乳製品を大量につくって保存することに力が注がれます。

このほか、家畜のフン集めにも余念がありません。牧民の家では、暖をとったり料理をしたりするかまどの燃料として、乾燥した家畜のフンを使っています。家畜のフンというと汚いと思われるかもしれませんが、モンゴル人曰く「天然のきれいな草しか食べていないのだから、排泄物だってきたなくない」のだそうで、実際、家畜のフンをかまどに入れて燃やすと、まるで草を燃やしているような香りが立ちこめます。この匂いは、モンゴル人にとっては、とても心安らぐ匂いなのだそうです。女性たちによって集められた家畜のフンの一部は冬の燃料用にまわされ、男性たちの手によって冬を過ごす冬営地へと運ばれます。

s このように、夏の終わりから秋にかけては、11月頃から半年近くに及ぶ長い長い厳寒の季節に備えて準備をする大事な時期。男も女も休む間もなく働きます。そこでは、のんびりとしたイメージを想像しがちな「遊牧」という言葉からは想像できないほど、忙しい生活が繰り広げられています。

それでは、また。その他の季節の遊牧民の暮らしについては、また後の機会にご紹介したいと思います。 バヤルタイ。

追伸:

ウランバートルでは紅葉がはじまり、9月16日には初雪が降りました。窓から眺める景色は日本の冬のようです。