『すぐに役立つモンゴル語会話』番外編
モンゴル草原の国だより Vol.2
モンゴルの夏休み 文:津田紀子
テン・ブックス刊行の「すぐに役立つモンゴル語会話」を編集してくれた 津田さんが、ご一家そろってウランバートルで生活されることになりました。 そこで、今月から、モンゴルのことをおたよりで紹介してもらうことにしました。 草原をなでる風や、そこで生きる人々の息づかいが聞こえてくるようです。

サインバイノー(こんにちは)!

前回のお便りでご紹介しましたように、近年、ウランバートルの生活は急激に変化しています。車に乗り、携帯電話片手に忙しい毎日を送る人々の暮らしぶりは、日本に暮らす日本人とほとんど同じで、その便利な生活を楽しんでいるようにみえます。

では、彼らが、草原の生活よりも都市の生活のほうがよいと思っているかというと、
そんなことはありません。彼らは草原の生活が大好きなのです。

その証拠に、夏休みになると、多くの人がウランバートルを離れ、草原に出かけます。
滞在先は、親戚の遊牧民のゲルや草原の別荘地。

モンゴルは夏休みが長く、学校機関は6月から8月の3ヶ月、会社員でも1ヶ月の休みは普通なのですが、なかにはその休みのほとんどを草原で暮らす人もいます。そのため、夏のウランバートルは、普段よりもなんとなく人が少なく、活気がないように感じられます。

というわけで、今回は、夏の草原生活の魅力をご紹介したいと思います。

ウランバートルの中心地から車で30分もいくと、馬や牛、ヒツジ、ヤギがあちらこちらで草を食べる牧歌的な風景が広がります。

夏の草原は、ひんやりとした空気と風がとてもさわやかです。

夏に集中して降る雨のおかげで草が育ち、緑色の草の絨毯(じゅうたん)がどこまでも続きます。また、色とりどりの高山植物が咲き乱れ、草原に彩りをそえています。

緑の草原のなかに、時折ぽつんと白く見えるのが、遊牧民の暮らすゲル。

ゲルは、木の枠組みのまわりを白いフェルトで覆った住居で、分解も組み立てもわずか1時間程度でできます。そんなきわめて簡易な住居ですが、中に入ってみると意外なほど広く、かまど、ベッド、たんす、食器棚などの家具が揃っていて、暮らしやすい空間であることがわかります。

窓はありませんが、煙突の出ている天窓部分が、フェルトをめくることで開閉し、またゲルの裾をまくって風をとりいれることができるので、暑い日も快適に過ごせます。 ゲルの中には、プライベートな空間はありません。たとえ客であっても、皆でいっしょに食事をし、語り、お酒を飲み、そして体を休めます。

また、モンゴルの夏に欠かせないのが、乳製品です。

草を食べて、丸々と太った家畜からは、一日では消費しきれないほどたくさんの乳がとれます。その乳を利用して、チーズ、ヨーグルト、バター、それから馬乳酒や蒸留酒などのお酒にいたるまで、さまざまな自家製の乳製品がつくられるのです。

とりわけ馬の乳を発酵させてつくる馬乳酒は、モンゴルの夏を代表する飲み物です。 アルコール度数は1~2%ありますが、老若男女とわず、水がわりに飲まれています。

このように美しい自然と家畜に囲まれて、つくりたての乳製品を食べながら、のんびりと時間を過ごす…これは、なかなか贅沢な生活ではないでしょうか。

そうして秋の声が聞こえる頃、草原での休みを満喫した人々は、活力を得て、再びウランバートルに戻ってくるのです。

それでは、今回はこのへんで。

バヤルタイ!