『裁判員になるってそういうことだったのか!』番外編

■警察庁の取り組み

A.取調べの一部録音・録画の試行

 基本的に最高検察庁と歩調を合わせている。

 警視庁や大阪府警など5都府県警において、2008年9月から「取調べの一部録音・録画」の試行を開始し、2009年2月までの半年間で66件行った。録音・録画された被疑者は女4人を含む58人。罪種別では、強盗殺人・傷害などが21件、殺人など(未遂を含む)が12件、強盗強姦など(同)が12件などのほか、被疑者が拒んだ例が1件あった。取調官が、撮影の際に容疑者の供述内容に変化があったと感じた事例が11件あり、自分に有利な供述を積極的に話し始めるなどの変化もあったという。(2009年3月26日 20:01/NIKKEI NET参照)

 2009年4月から、おおむね「(1)録画直前にとった供述調書の読み聞かせ(2)なぜそのような供述をしたのかなどポイントを質問(3)被告と取り調べた検察官がそれぞれ調書に署名する-までを録画する」(MSN産経ニュース2009.3.28 20:00より)試みが全国の警察で始まった。これは、供述が強制されたのではなく任意になされたものであることを立証する目的で導入された手法で、裁判員裁判において適正かつ有効に活用されることが望まれる。

B.取調べ監督制度

 富山県の強姦冤罪事件や、被告人全員が無罪となった志布志の公職選挙法違反事件などを受けて、警察庁は「取調べ監督制度」を導入した。これは、捜査部門以外の警察官が取り調べのもようをチェックする制度で、都道府県警察本部の総務部門に新設された組織が監督に当たる。警察署では、刑務係の所管。

 「監督対象行為」には(1)直接または間接の有形力行使(2)殊更に不安を覚えさせる言動(3)便宜の供与、もしくは、その約束(4)人の尊厳を著しく害するような言動などとされている。場合によっては、取調べの中止を求めることもあるとされる。

 監督官は取調室内の様子を透視鏡やドアスコープなどを通して観察するほか、報告書などで状況を確認し、取調べの適正化を図る仕組みである。加えて、警察本部の「巡察官」が抜き打ちで各警察署を回るなど、チェック機能が強化された。

 2008年9月から全国の警察署で試行され、同年12月19日までのまとめでは次のような「“問題”取調べ」があった。

 *事前承認なしの深夜早朝や1日8時間以上の長時間取調べ=8件

 *たばこや飲食物を与える便宜供与=4件

 *(任意の事情聴取中に帰ろうとして立ち上がった人の両腕をつかんで坐らせ  るなど)身体への接触/(固定していない机を蹴るなど)直接間接の有形力  行使=1件

 *ことさら不安を覚えさせ、困惑させる言動=1件

 (『日本経済新聞』2008年12月20日付夕刊、および『宮崎日日新聞』2008年03 月28日参照)

 以上から判断して、人権に配慮した取調べに向かって一定の成果が期待できなわけではない。ただ、監視も監督も部署が違うとはいえ同じ警察官が行うことになり、誰でもが抱く身内への甘さが生じる心配は払拭できない。また、「殊更に不安を覚えさせる」ことや、「尊厳を著しく害する言動」の判断に絶対的な基準はない。取調官も取り調べられる側も、常時監視では堅苦しくてやりきれないだろうから、せめて第三者による検証を可能にする方向で検討してもらいたいものである。(『宮崎日日新聞』2008年03月28日参照)