ホーム トップ > 投稿閲覧室 > ノンフィクション > 東京の竹屋探訪記(6)
東京の竹屋探訪記(6) 文: もぎ ちえこ 作者にメールを送ります
閲読数:[ 569 ]    コメント:[ 0 ] ※クリックでコメントフォームへ

2012.9.12
荒川区西日暮里「M屋」

 JR線の日暮里駅から歩いて5分ぐらい、谷中にあるお店です。「江戸伝統を引き継ぐ竹工芸の店。全国をまわって竹を選別し竹割りから編み、染色まで全工程を隣接の工房で行う」とインターネットにありました。
 あいにくと出かけたのが工房の休みにあたる水曜日で、そちらのほうは、外から眺めただけですが、店内にはたくさんの商品が陳列してあって楽しめました。
 谷中銀座の手前の角地にあり、店先には竹の小物が籠に幾種類か入れてあって目を引きます。店内は14、5畳くらいの広さがあったでしょうか。入りやすい雰囲気で、花籠の種類なども豊富でした。売れるとすぐに工房から作品を持ってきて補充するのでしょう。ほかにバックや色紙掛けといった作品もならび、箸置きや竹コップ、竹スプーン、お箸、ストラップ、竹しおりといった小物も、デザイン性に優れていて感心しました。
 あわせてお店の三代目のご主人である武関翠篁氏の作品も展示されています。伝統工芸木竹展、日本伝統工芸展などで、数々の受賞歴をもつ竹工芸作家です。そうした作品はガラスケースのなかに収まっていましたが、その前に2畳ほどの畳のスペースがあり、そこにもいくつか作品が置いてありました。
 2年ほど前に日本橋三越で開催された個展の図録があったので買いました。こうした図録はなかなか手に入らないので、チャンスは逃しません。
 谷中という土地柄か、散策する人がたくさんいて、次々にお店に入ってきてにぎやかでした。立地条件のよさと商品の質の高さで、これからも繁盛しそうなお店です。
 駅からお店までの途中に猫雑貨の店や、籠バックをたくさん並べた和雑貨の店もあってそちらにも寄り道をしました。猫の聖地東京下町谷中ということで、「谷中のら猫ラプソディー」というドキュメンタリー映画も完成しているようです。猫と人間の「共生」を願う、ヒューマン猫ドキュメンタリーとチラシにありました。でも暑かったためか、行きも帰りも猫の姿を見られず残念でした。

   *    *    *


・若き竹工芸作家

 竹工芸教室の仲間のなかに別府(大分県)の竹工芸訓練支援センターに入学した女性がいます。仕事をやめて埼玉から別府に移り住み、2年間、学校に通い修行しました。その後、中堅技術者養成指導コースに進み卒業して現在は竹工芸作家として活躍しています。今年の7月、彼女の作品展が埼玉の珈琲&ギャラリーで開かれたので行ってきました。
 さすがに学校で毎日、材料作りをしていた人の作品は違います。当たり前ですが、きちんと商品になっています。どんなに一生懸命でも趣味として作った作品とは一線を画しているのがわかりました。
 竹工芸教室に入会して間もなく、別府の学校の試験を受けた流れを思うと、その最初から彼女には秘かに期するものがあったのかもしれません。
 自分で竹を割って材料を作るようになると、誰しも幅決めや厚さ決めの器械を購入するのですが、彼女はそれをしませんでした。別府の学校に入学することを思って、本格的な道具揃えはそちらでするつもりだったのでしょう。
 彼女が学校に入学したのは30代のはじめで、それなりの社会的な経験を積んでいたとはいえ、慣れない土地で1人になって勉強するのは大変だったろうと思います。そこで頭角を現していくための努力も怠らなかった。芯の強さに感心しますが、見かけはいたってやさしい風情の女性です。
 今後は別府を離れ、杵築市(大分県)に古民家を買って、そこをギャラリー兼仕事場にして生活していくようです。事情に明るい仲間が、別府にはすでにたくさんの竹工芸作家がいて、彼女のような新人が、そこで食べていくのは大変だからじゃないのか、と話してくれました。彼女の作品作りも、今後はもっと個性を前面にだしていく必要がある、と厳しい見方をしていました。
 精進して技術を磨き、あわせて作家としての個性も創っていかなければならない。すべてが自分の手にかかっています。竹に惹かれたということが一番でしょうが、これからの人生を、自分で舵取りしたのだと思います。杵築市の家には、彼女の両親も移り住むそうです。
 
   *    *    *


・常総市で油抜き

 2012年の2月に油抜きの予定でした。でも、体調が悪くて参加できませんでした。残念です。
 それで前回の油抜きの様子を参考までにお知らせすると、ステンレスの釜に、竹を20本ほど入れて煮るという作業が中心になります。釜は五節の竹を横にして入れられる長方体のもので、竹工芸の会で特注しました。
 その釜の両端を台の上に固定して、水をはり下から火をつけます。そのために必要な薪は竹伐りのときに用意しておきます。ほかにおがくずや炭などもくべてお湯をわかし、そこに苛性ソーダを入れ竹を煮るのです。
 油が浮いてきたらとりだし、もみがらで汚れをぬぐうのですが、何年か前に、一緒に固形せっけんを入れておくとその作業が容易になることを発見しました。
 のんびりしていると、竹の表面がすぐ冷えて、せっかく浮き出た油がとれなくなってしまうので、手早く作業します。作業台のまわりに立って、何人かで声をあわせて竹を回します。特に節の部分は念入りにしておかないと、あとでよごれが浮き出てきて、作品を作るときに、がっかりすることになります。
 そうした作業を何回となく続けて150本の竹を油抜きするのです。竹を煮ている間も、薪をくべたり水を補充したり作業はいろいろあってなかなか休めません。いちどきに作業できないので、時間を計算すると、どうしても早朝からの作業になり、何人かは、前日に釜を設置するなど、準備にもたずさわるので、2日連続の重労働になります。
 その後、くじ引きをして竹を分配するのですが、いい竹にあたりますようにといつも願ってしまいます。もちろん公平になるように分けてあるので、どれにあたっても同じなのですが。
 そうして手にした竹は本当に貴重で、天日干しした後、これはキズが少ないから、展覧会用の作品に、などと考えたりするのは本当に楽しいものです。来年は体調を万全に整えて参加したいと思います。

09/24/2012


閲読数:[ 569 ]    コメント:[ 0 ] ※クリックでコメントフォームへ