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東京の竹屋探訪記(5) 文: もぎ ちえこ 作者にメールを送ります
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2012.6.12
立川市錦町「K店」
 中央線の立川駅から京王バスに乗り、日野橋交差点停留所で降りて1分のところに店はありました。店先に置いたワゴンに、籐や竹の籠がたくさん積まれています。これまで訪れた店とはあきらかに雰囲気が違っていました。
 店はビルの1階部分のはじにあり、奥行きは20メートル近くあったでしょうか。細長い通路の両脇に、足元から壁まで、竹製品、籐製品がぎっしり陳列されていました。花籠、果物籠、バック、ざる各種、竹フォーク、竹スプーン、お箸など、品数は数え切れません。
「東京にも、こんなお店があるんですよ。昔なつかしい民具から、おしゃれなインテリア、伝統工芸品まで各種取りそろえております」とインターネットの「お店詳細情報」にありましたが、看板に偽りなしです。
 お店の方が出てきたので、ゆっくり見学させてくださいとお願いしました。花籠も宗然籠、せみ籠、鶴首、掛花籠、吊花籠など多彩で、これだけの種類のものを、まとめて見たのは初めてでした。
 店の奥の方にいくと竹や籐などの材料も少しありました。3厘の皮籐を見つけて買うことにしました。これは籐の皮の部分を細く裂いたもので、竹の花籠を作ったときに縁まきにつかう必需品です。普段の作品では2ミリ程度の幅の皮籐を使いますが、展覧会などに出品する作品にはこの細さのものを使って、ていねいに細かく巻きます。価格も普通の皮籐の何倍もします。
 レジで店の方と少し話をしました。
「すごい品揃えですね」と言うと「この店にくるのははじめてですか」ときかれました。物静かな白髪の女性ですが物言いに自負心が感じられます。店の経営者なのかもしれません。
 注文が入ってもすぐには作れないので、作りおきしていると、さきほどの質問に答えてくれました。籐を包みながら、3厘の皮籐を作れる職人も少なくなっているといった話もでました。細かい作業なので年をとって目が悪くなるとたくさんは作れないそうです。在庫が少なくなることを心配していました。
「竹工芸をやっているので、この幅のものを見つけてうれしかったです」と説明しても、驚かなかったので、事情通には知られたお店で、こうした材料を買いに来る人も珍しくないのかもしれません。花籠がこれだけそろっているのは、茶道界、華道界にお得意さんが大勢いるからだと思われます。「創業以来、竹製品、籐製品の専門店として・・・」とホームページにあったので、竹屋さんではなく、籠屋さん、小売店ということになるのかもしれません。
 店の外のショウィンドウには牡丹籠(手の長い大振りな花籠)がおいてあり花も活けてありました。すごい店があるものだと、帰り道、何度もつぶやいてしまいました。

2012.7.13
台東区松が谷「S商店」
 竹作品の仕上げに2厘、3厘の籐が欠かせないため、どこで調達するかという話になったとき、竹工芸の仲間からでてきたのがS商店の名前でした。籐の専門店としては小西貿易が有名で、もちろんその名前もあがりました。
 小西貿易には1度行ったことがあります。ビルの3階に店があって、店内にはたくさんの棚が所狭しと並び、まるで倉庫のようでした。そこに太さの違う丸芯、色染めされたもの、皮籐、キャクタンなど、さまざまな種類の籐が大束、小束になっておさまっています。ほかにも骨組枠、工具、本とあって、その品揃えに目を見張りました。竹も少し扱っていますし、2厘から6厘の面取した(角を丸くした)特殊な皮籐もあります。それでS商店も似たようなお店なのだろうと勝手に想像していました。
 地下鉄日比谷線の入谷駅から徒歩8分ということで、店をさがしました。看板はすぐ見つかったのですが、そこにあったのは事務所でした。並びに店があるのだろうかと路地を行ったり来たりしてみましたが、作業場と工場? らしきものはあっても商品を並べた店は見当たりません。それで事務所に入って声をかけてみました。
 男性が1人現れたので「ここは小売はしていないのですか」と聞いてみました。すると「電話で注文をいただいた方ですか」と聞き返されてしまいました。事務机と応接セットのほかに工具類の入ったガラスケースや、棚には籐の束が並んでいることに気づきました。
 ちぐはぐなやりとりをした後、「2厘か3厘の皮籐はありますか」とたずねると、目の前の戸棚を開けて束をとりだしました。その戸棚にはそうした束がいくつか重なっていました。
「竹工芸に使うのですか」と用途も知っています。「いくらですか」という問いに、万の単位の答えがかえってきたので、思わず「高い」とつぶやいてしまいました。
 いつも、小西貿易に、電話でメーター売りの注文をしていたので、そう感じたのですが、それぐらいの束であれば(たぶん長さでいえば300メートル近く)妥当な金額です。安いといってもいいかもしれません。恥ずかしくなりました。
 触ってみて上等品とわかったので欲しかったのですが、それ以上小分けにはしないということで、あきらめるしかありませんでした。後で、S商店は、皮籐を束でしか売らないので万札を持っていかなければ駄目だよと言われたことを思い出しました。
 籐製品の専門店であることは承知していたのですが、東京の竹屋をインターネットで検索すると必ず出てくる店だったので期待して出かけてしまいました。竹屋探訪記は事前にインターネットで調べて出かけるのですが、実は載っている情報はわずかなのです。行って見なければわからないというのが実情です。これもまた竹屋が衰退している職業だからかもしれません。

07/23/2012


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