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竹のこと通信⑤―カフェ&ギャラリー三題― 文: もぎ ちえこ 作者にメールを送ります
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    カフェ&ギャラリー三題
                もぎ ちえこ

 ふっと、思い立ってカフェ&ギャラリーめぐりを始めました。このところ、一ヶ月に一度の割合で美術館に出かけているのですが、その後、食事して、おしゃべりするだけではもったいないと気づきました。
 一緒に美術館めぐりをしている友人が、そうした店の運営に興味をもっていたこともあり、カフェ&ギャラリーの実情を偵察してみたいと提案すると、すぐさま賛同してくれました。
 まだそれほど回ったわけではありませんが、印象に残った三店をご紹介します。

・自然館
  ―東京都小金井市・2015.7―
 実は、ここを訪れるのは二度目です。一貫張り教室で仲良くなった友人に連れていってもらったのが最初で、この店を知らなければ、今回のことは思いつかなかったかもしれません。そのため初回はそこから。
 JR線の武蔵小金井駅から徒歩で五分くらい。といっても商店街ではなく、大通りから一歩入った住宅地の一画にあります。
 ホームページは作成中ということで(2015年11月現在)インターネットから得られる情報は、食事が絶品という賛辞が主、展示や催し物についてはあまり記事がありません。
 店内はL字型で主な展示スペースは、L字の長い方になります。入口は短いほう。
 一度目は入口に近い窓側の席で友人と食事をしました。そのときは、おしゃべりに夢中で、展示はさっと見ただけでした。奥で、楽器の音あわせのようなことをしていたので、邪魔になっても、と思ったこともあります。ミニコンサートが開かれることもあるようなので、その音合わせをしていたのかもしれません。
 今回は奥のテーブル席に着きました。たまたま学校が夏休みだったせいか、小学生の化石採集の発表会のような展示でした。それでも、割箸を並べて作った額など感心しました。割箸を、竹やホームセンターで売っている端材に変えれば面白いものができそうです。アイディアをいただきというところ、これだけでも来たかいがあります。
 混在して常設の作家の作品もあり、楽しめました。
 展示のための設備が整っていて、壁面は広く、額も多く掛けられそうです。棚や作品を並べるスペースも十分。でも一人だけでこのスペースをうめるには、相当数の作品が必要になります。
 ランチメニューから注文したのですが、ネットのブログにあるとおり、おいしくて満足。食事の後にたのんだハーブティーも種類が豊富で選ぶのに迷いました。
 定休日は日曜日で十一時から十七時の営業。駐車場はないとのことですが、駅から近いので不便ということはなさそうです。長く続いてほしいお店です。

・のと
  ―所沢市・2015.8―
 西武新宿線の新所沢駅から歩いて七分のところにあるギャラリーカフェです。「陶芸を中心に個人作家の作品を常時展示。アットホームなサロン空間を提供したいと考え、始めた」とホームページにあったので、当然のようにお店をイメージしていました。
 でも真夏の炎天下、地図を頼りにさがしても、なかなか見当たりません。迷っていると、親切な男性に出会って、スマホで音声検索をかけてくれたのですが、それでもわからなくて、看板に気づいたのは何度も道を行き来した後でした。
 見つからないはずです。お店という構えではなく、普通の一軒家でした。入口と建物の壁に、ギャラリーカフェの看板が出ているだけです。
 そういう構えのお店? なので立ち往生しました。ためしにドアに手をかけてみると開いたので、声をかけましたが、応答がありません。普通の家の玄関で、子供用の自転車など置いてあり、靴もたくさん散らばっています。
 あらためてインターホンで呼び出してみました。今度は応答があって、女性が出てきました。この店のオーナーのようです。
 ホームページで検索して、といった事情を話すと、現在は完全予約制にしているということでした。客があまりに来ないので一年前からそうしたといいます。昼食は要予約と注意書きがあったので、食事はすませていましたが、展示までとは思いませんでした。
 見学の希望をおそるおそる告げると、それでも了解して家にあげてもらえました。
 玄関をあがって右側にある十畳ほどの和室が、展示スペースになっていて、床の間や長押に作品が並んでいます。続きの三畳ほどの板の間には、テーブルとイスが用意されていました。
 コーヒーをたのみ展示を見ました。ホームページにあったとおり、陶芸が主でしたが、飾り雛や袋物などもあって、量的にも見ごたえがあります。気に入った作品があったので購入することにして一休み。
 今夜は食事会の予約が入っていて準備中ということで、部屋はきれいに整頓されていました。サービスで出してくれた手作りのロールケーキもおいしかったし、冷茶もコーヒーも満足のいくものでした。
 おいしい料理に舌鼓を打ちながら、作品に囲まれおしゃべりをする。食事会といっても、知人の家におよばれしたような感じで過ごせそうです。
 板の間に水屋(茶の湯で、茶室の隅に設け、茶事の用意を整えたり、使用後に茶器を洗ったりする所)と思われるスペースがあり、和室の天井に釜をかけるフックがあることに気づきました。床の間もひろく、お茶席として使えるようになっています。
 たずねてみると、娘さんが一時、お茶をならっていて、新築したときにそのようにしつらえたそうです。タタミには絨毯がしかれているので隠れてわからないけれど、釜も切ってあるといいます。でも今はやめてしまって、と笑っていました。茶せんや茶碗を置くスペースも今は展示台になっています。
 普通の一軒家でもこうしたギャラリーができるというのは発見でした。もちろん採算は度外視になります。並んでいる作品はどれも質の高いものでしたが、ずいぶんデスカウントされていました。

・温々(ぬくぬく)
  ―さいたま市・2015.11―
「築170年の時の流れをくぐりぬけてきた古い家屋を改築し、ギャラリースペース・コーヒーラウンジ・その他クラフトマンによる日常雑貨を紹介するアミューズメントな空間をつくりました」と店内に置いてある紹介文にあるとおり、古民家を利用したカフェ&ギャラリーです。
 JRの宇都宮線の東大宮駅で下車し、タクシーかバスという交通手段。ネットでバスの運行時間や乗り場を調べてあったので、迷うことはありませんでした。でも念のため運転手さんに確認するとびっくり。下車する予定のバス停はそこから7番目なのですが、午前中は逆まわりの便しかないといいます。全部で23の停留所にとまるので、逆まわりだと16番目、時間がかかると言われ、あわててバスを降りました。
 タクシーに乗り運転手さんに行く先を告げると、すぐわかって、十分くらいで温々(ぬくぬく)の入口に着けてくれました。催し物のあるときなど、よく乗せるといいます。
 曲がり角に表示板があり、入口にも大きな看板が掲げてあるのですが、まわりは畑。それらしい建物がないので一瞬迷いますが、小道に入って野菜直売所の前を通り、駐車場になっている空地の左側に、温々はあります。
 なぜそのスチエーションを知っているかというと、以前、そこのギャラリーで知り合いが展示をしたからです。所属する竹工芸会から別府の竹工芸学校に入学した女性がいて、卒業後、彼女がそこで展示会を開きました。不便なところで、車で行くしかないよ、という仲間の説明で、教室終了後、四台の車に便乗して会いに行きました。三年ほど前のことです。
 今回訪れたとき、ギャラリースペースでは、切貼画文と器作品の二人展がひらかれていました。お昼時だったので、まずは食事を注文してから見学です。
 ギャラリーは八畳ぐらいの細長いスペースで、壁と棚、そしてテーブルの上に作品が並べられていました。土壁の何箇所かに平行に穴があいていて、デザイン的な飾り? と最初は思ったのですが、棚板を差し込んで固定する穴だと気づきました。これなら作品によって棚の位置を簡単に変えられます。穴は数箇所あったので、何段かに重ねて展示することも可能。アイディアだなと思いました。展示は二週間ごとに変わるようです。
 続いて、お店の入口や、レジまわりに置いてある「作家によるさまざまな暮らしの雑貨」を見ました。スタッフ選りすぐりの手づくり雑貨を店内で販売しているのです。以前、あきる野市のテキスタイルスタジオで見た布を見つけました。
 ひとまわりしてから席に戻り食事です。十人以上かけられるような大きなテーブルの端に席をとりましたが、ほかにも数人で食事が出来るテーブルが何台もあります。
 カウンターで一人で食事している女性、友人同士、なかには小さなお子さんを連れたお母さんもいて店内はにぎわっていました。手づくりのパンとケーキ、地元でとれた野菜を使ったレシピなど、食事に来るだけでも楽しめるお店です。最後にもう一度ギャラリーの展示を見て、気に入った雑貨をそれぞれ購入し店を出ました。
 来てよかったという感想が自然にもれました。実はこの数ヶ月、カフェ&ギャラリーを探してずいぶん足を運んだのですが、これぞと思える店になかなか出会えませんでした。雰囲気はいいのだけれど、展示が物足りないなど、こちらのわがままもあるのですが、こうした店の運営は難しそうです。
 工房にギャラリーを併設している場合は、自分の制作があるので、曜日が限定されます。検索してよさそうと思っても、閉店しているお店も意外と多いのです。開店はしてみたけれど、採算がとれないということでしょうか。
 さて、帰りはバスしかありません。駅からタクシーで来たとき通った道路の反対側の停留所へ。ここで再びびっくり。この停留所に止まるのは午前のみ、午後は向かい側の停留所をご利用くださいとあります。
 半信半疑のまま道路を渡りましたが、こちら側の停留所では、車の進行方向が逆。駅から離れていくことに気づきました。案内板でルートを確認すると、循環バスのようです。ということは、ぐるっとまわって駅までもどるしかないということでしょうか。
 状況を理解するのに、停留所の前でずいぶん議論しました。バスの運転手さんが、午後なら、その停留所まではすぐだけれど、と言っていた意味がやっとわかりました。こうした事情はネットで調べてもわかりません。
 歩いて帰れるわけもなく、来たバスに乗るしかありませんでした。バス停の名前はファミリータウン入口。実際、少し走ると集合住宅が見えてきました。何棟も並んでいます。次にアーバンみらい東大宮。これも何棟も並んでいて、おまけにその背後に遊水地が長々と続きます。停留所三つ分はありました。
 あとで地図で確認してみると、深作遊水地と記載があって、利根川水系の深作川(一級河川)の多目的遊水地とわかりました。
 遊水地は豪雨時の水害を防ぐためのもので、一般的には柵で囲われ水と触れ合うことができないようです。でも、この遊水地には、遊水地公園やアーバンみらい公園があって、水や緑に親しめるだけでなく、カルガモなどの野鳥をはじめとする動物と触れ合うことができる(岩槻エリアガイド)ということでした。近年は学術調査も進められ、その豊かな自然に注目が集まっているそうです。
 バスは、この地区の住人のために、利便性を考えて運行されているのだと気づきました。午前中は通勤、通学に便利なように、ぐるっと回ってきて、駅にすぐ着くルートを走る。午後は、帰宅に便利なようにそのルートを逆にするということです。
 あとで再度、バスの路線図を確認してみると、駅手前の6番目の停留所からは、同じ道路を行き来していました。ということは、駅方面に停留所を一つ戻れば、ぐるっとまわらずにすんだのかもしれません。
 それでもそんなに時間がかかるわけではないので(一時間はかからない)、遊水地の緑を楽しんだり、普段とは違う街の景色や雰囲気に目をこらしていれば、あっという間に、駅に着きます。
 新たな展示を見に、違う季節におとずれてみたいカフェ&ギャラリーです。

12/01/2015


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